モノとインターネットがつながるIoT技術などで使われるビッグデータについて、経済産業省と特許庁は「営業秘密」として保護を強化する。ビッグデータを分析する人工知能(AI)の技術についても、盗まれて悪用された際に使用差し止め訴訟を起こしやすくする。これまで曖昧だったデータや分析技術の法的な位置づけを明確にして、関連ビジネスを進めやすくする。
10月に次世代の知的財産制度に関する検討会を開き、データやAIの保護強化策を検討する。営業秘密について定める不正競争防止法の改正も視野に議論する。来年3月末までに方向性をまとめ、来春に閣議決定する成長戦略に対策を盛り込む。
IoTでは大量のセンサーやカメラを活用して、機械や自動車などからデータや画像を大量に採取して分析する。その分析に用いられるのがAIだ。
こうしたデータや分析技術そのものは数字の羅列にすぎず、「創作性」が求められる著作物や、仕組みや機能を詳しく書き込む特許として保護を受けにくい。民法でも、所有権の対象が形のある物に限られるため、企業の財産でもあるデータやAIをどう守るかが国際的な課題になっている。
経産省と特許庁は、データやAIが企業の「営業秘密」であることを明確にすることで、知的財産権の保護対象に位置づける。
営業秘密として守られるには「世に知られていない」ことが必要条件となる。企業間でデータを共有する横の連携が増加すればこの条件を満たさず営業秘密として守ることが難しくなる。
そのような場合でもデータを保護できるよう両省庁は、データを共有する際に交わした契約を破り、勝手にデータを使ったり開示したりする行為を不競法に違反する「不正競争行為」に位置づける方向で検討する。
現在、不正競争行為は、有名なブランド名を勝手に使う行為や、商品の形を模倣する行為などで、これらに新たな行為を追加することになる。追加するためには不競法の改正も必要になる。
AIを巡っては2015年11月に米グーグルが画像や音声の認識などに使うマシンラーニング(機械学習)のソフトを無償で公開した。こうした機械学習を用い、大量のデータを読み込んで賢くなったAIの「学習済みモデル」が今後はIT(情報技術)や製造業など幅広い分野で中核的な技術となる。
経産省は検討会での議論を経て、AIの学習済みモデルの保護を強化する方針だ。具体的には不競法上の「指定技術」に加えることを検討する。指定を受けた技術は、不正に取得されて悪用された場合に、被害を受けた企業が使用差し止め訴訟を起こしやすくなる。
経産省と特許庁は検討会の開催と並行して、大手企業約1000社を対象に、企業内でのデータ保護の方法や他社とデータを共有する際の契約方法についても実態を調査。企業の取引実態に合ったルール見直しを進める考えだ。
▼営業秘密 商品の競争力につながる独自の製造方法・素材や、販売方法のようなノウハウなどで、外部に知られず秘密にされているもの。不正競争防止法によって定義されていて、営業秘密として認められるためには(1)秘密として管理されている(秘密管理性)(2)利用価値がある(有用性)(3)世に知られていない(非公知性)――の3つの条件を同時に満たしている必要がある。
米コカ・コーラが特許化せず、秘中の秘としているコーラのレシピなどが代表例だ。
発明内容を世に広く知らせることで技術利用料を得る「特許」と並んで、企業の知的財産戦略の両輪と位置づけられている。
IoTデータ、保護強化へ「営業秘密」に、